Jewelry KIHO 
宝石の豆知識 part8

宝石の処理について
「この宝石は人工的に処理がされているのでしょうか?」

と言う質問をよく受けます。

宝石の処理にも色々ありまして、主に熱処理、放射線処理、オイル処理、染色などがあります。 それらの自的はすべて、宝石をより美しくすることにあります。
(中には「より高く売れるから」と言う目的もあるかも知れませんが…)

これらの処理はそのほとんどが原産地で行われており、日本では行われておりません。

現在、世界で流通している宝石のほとんど(95%)が何らかの処理を施されていると言っても過言ではありません。

初めて聞く人はびっくりするかもしれませんが、ルビーやサファイア、アメシストやガーネット、アクアマリン、パライバトルマリンに至るまで、そのほとんどの石は加熱処理がされており、色をより良くするという処理は、ずいぶん以前から行われてきたことです。また、エメラルドなどにはオイル処理が施されております。
(一部非加熱コランダムを除く。しかし、これも鑑定機関の認定方法が国によって異なりますので結構いい加減です。鑑定方法の限界があります。エメラルドの非オイル処理の認定方法に至ってはずさんそのものですが…。)

ですので、私は

「この宝石は人工的に処理がされているのでしょうか?」

と言う問いに対し、

「100%処理されていると思って間違いはありません」

とお答えしております。

問題なのは、このほとんどの宝石を熱処理をしている事実を日本の宝石店、鑑定機関が

「エンハンスメント処理をしています」

などと、一般には分かりづらい表現をしていて、熱処理に関して正確に伝えていないことであると思います。どうも隠蔽したがっているように受け取られかねません。

世界的な認識といたしましては

「宝石=熱処理」

は常識であるのに対し、日本ではまだまだその認識が遅れております。
この加熱処理は世界的に天然宝石として認められております。

紛らわしいのですが、処理には「トリートメント」と、「エンハンスメント」があります。
そこで、このトリートメントとエンハンスメントについて簡単に説明いたします。
トリートメント
とは?
天然宝石の性質に関係なく、人工処理を施し美しさを変えようとすることです。

これは、簡単に言いますと石に色を塗ったり、穴にプラスチックを充填したりと、天然宝石として容認出来ない処理が施すことをいいます。

具体的には、エメラルドに有色オイルを含浸させて、本来もっている性質に関係なく色を変化させたり、 色の薄いサファイアを合成配分された着色剤(チタンと鉄)の粉末といっしょに加熱処理して色を濃くする処理(表面拡散処理)や、染料を用いてひすいを染色する処理などがトリートメントと見なされています。

それらの処理石は、定義上、エンハンスメントと混同されることはありません。 鑑別書にはそれぞれ、処理エメラルド、処理サファイア、染色ひすいと明記され、天然石とははっきり区別されます。
エンハンスメント
とは?
エンハンスメントとは「改良」を意味します。 

天然宝石が本来もっている性質に沿い、それを損なうことのない範囲で人工処理を施し、よりよい美しさを引き出そうとすることが改良です。 

改良は、定義上、トリートメント(人工処理)と明確に区別されます。 

ルビーやサファイアの加熱処理は改良であると考えられています。 たとえばサファイアの場合、酸化チタンが青色の原因になっています。 しかしこの着色元素(専門的にはそういいます)である酸化チタンは、石のなかで、針状に固まってしまっている場合があります。 これではいい青色は出せません。 そこでこれをたいへんな高温で加熱してやります。 すると酸化チタンは溶けて、着色元素としての働きをはじめます。 すると色の淡かったサファイアか、深く濃い色合いのサファイアに変わるのです (内部拡散処理)。

これもたしかに人工処理ですが、天然サファイア本来の性質を変えた訳ではありません。 むしろその性質に沿って、自然がたまたまできなかったことを、人間がかわりにしたのです。 目的は美しくするためです。 変えられた色は永遠です。 

これがエンハンスメント。 改良されたものは天然石の性質をなんら変えるものではないので、天然石と同様に扱われます。 ほかには、アクアマリンやトパーズを加熱して色を良くしたものも、改良と考えられ、天然石と呼ばれます。

また、エメラルドの内部の亀裂に無色透明のオイルをしみこませ、亀裂を目立たなくすることで色を良くするという処理も改良と考えられています。
要は、人工処理宝石という意味を正確に認識することが大事であると思います。

また、いくら処理をして美しくすると言っても、キズだらけの価値のない石を処理しても美しくなりません。もともと透明度が高く、美しい石を処理しないことには始まりません。

エメラルドのオイル処理の歴史は古代からあったと言われております。

もともとの原石を磨いてこそ宝石の価値が上がります。この磨くと言う行為さえ人工的な処理には違いありません。さらに熱を加えたり、オイル処理をしたりして、より美しい宝石を作り上げているのです。

最大の問題は日本の宝石店(小売店)、また鑑定機関が態度をハッキリさせず、この事実を明確にして一般ユーザーに伝えていない事です。
(伝えていないどころか、隠そうとしているとさえ見受けられます)

日本の宝石業界がこの点を改善していく努力をしてくれる事を切に願っております。

宝石の豆知識part1(宝石の値段の見方)へ行く
宝石の豆知識part2(鑑定書鑑別書保証書?)へ行く
宝石の豆知識part3(新品と中古品の簡単な見分け方)へ行く
宝石の豆知識part4(日本で買う宝石が世界一安い?)へ行く
宝石の豆知識part5(手作り枠とキャスト枠)へ行く
宝石の豆知識part6(貴金属に使われる地金について)へ行く
宝石の豆知識part7(宝石の硬度)へ行く

トップページへ戻る→